迷宮の美術史 名画贋作 – 岡部昌幸(監修)

名画贋作の画像

日本には沢山の美術館がありますね。
ゴッホや、フェルメール等、有名な画家の作品展も度々行われます。
しかし、名画と呼ばれる作品を生み出した偉大な画家たちは、歴史上、沢山の贋作が作られても来ました。

今回は、有名な贋作事件や、贋作が生まれる背景を紹介した本、『迷宮の美術史 名画贋作』について紹介します。

内容

第一章では、歴史上有名な二人の贋作者が紹介されています。

一人目は、オランダ人のファン・メーヘレン(1889-1947)。

彼の物語は、『ナチスの愛したフェルメール』という映画にもなっているので、ご存じの方もいるかもしれません。

映画のタイトル通りメーヘレンはフェルメールの贋作で有名です。

彼の書いたフェルメールは、ロッテルダムの美術館に堂々と飾られたり、ナチスの高官の元へ買われて行ったこともありました。

それだけ完成度が高かったんですね!

しかし、ナチスが集めた美術品のコレクションは、戦後、連合国軍に接収されてしまいます。
その中に彼が自ら描いて販売したフェルメールの絵があったため、彼は、ナチスの協力者として捕まってしまいます。

そこで、彼は驚くべき贋作の手口が明らかにします。

当初は、誰も彼の売ったフェルメールが偽物とは信じませんでした!
仕方がないので、彼は獄中でフェルメールの贋作を作成し、自分がナチスの協力者でないことを自ら証明します。
その結果、彼の技術を讃える専門家まで出て来ました。

二人目は、イギリス人のトム・キーディング(1917-1984)。

なんと25年間で2千点に及ぶ、贋作を作成しました!

バリエーションも物凄くて、パーマードガを筆頭に、ドラクロワゴヤマネマティスミレーモジリアニムンクレンブラントルノワール等々、多すぎて書き切れないほど様々な画家の贋作を制作しています。

彼は、贋作者である事が暴かれたあと、テレビで、自分の手口や技法を暴露します。

2章以降でも、有名な贋作にまつわる事件が紹介されていき、日本の浮世絵の贋作事件も紹介されています。

3章、4章では、贋作が多い画家や、その対策、真贋鑑定の難しさなども紹介されています。

贋作者が贋作を作成した動機が紹介されているのが、個人的には一番面白かったです。
先ほど紹介したファン・メーヘレンとトム・キーディングは二人とも、評論家や画商への復讐が贋作を作成した動機でした。
大金も得たけど、そもそもお金が動機ではないんですね。
そして二人とも見事に、評論家や画商を贋作で騙し、復讐を果たしています。

また、贋作者本人が話したことを全て鵜呑みにできるわけではなく、真相は未だに藪の中に隠された部分もあるようです。
読んでいて、どんな真実があるのか、想像するのも楽しかったです。

惜しいのは、本の中で紹介されている絵や画家の絵が、本には掲載されていない場合が多いことです。
興味を持ったら自分でネットで検索してみましょう。

新書でさらっと読めるし、飽きずに一気に読めました。

余談ですが、メーヘレンの贋作が、明らかになるきっかけになった、ナチスの収集した美術品の連合国側による奪還劇も『ミケランジェロ・プロジェクト』として映画化されています。

監督、主演はジョージ・クルーニー、共演はマット・デイモンです。

美術品の専門家たちが、特殊部隊を組織して、奪還作戦に挑みます。
こちらも興味があれば、見てみると良いかもしれません。

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